■GOOD AQUA■

 水草の生命力 1


 水草の育成について質問を受けたり、水草の育成方法についての解説を読んだりしていると、ときどき疑問に感じる部分が出てきます。たとえばその1つが「水草の生命力」に対する認識です。

 実際に水草を育てる経験をある程度積んだ方ならご存知だと思いますが、水草の生命力は強烈です。他の生き物となんら変わりありません。少々のことでは枯れたり溶けたりしません。それにもかかわらず水槽で枯れたり溶けたりするのは、単に私たちの水槽が水草にとって過酷な環境になっているからです。

 特に自然下の光量と水槽の光量とでは驚くほどの格差があります。pHも、たとえば「2」違っていれば100倍の水素イオン量の差が存在することになります。溶存二酸化炭素の量などにも大きな違いのあることが一般に知られています。

 ただ、「底床の中の通水性」だとか「底床の粒の締め付け」などといった要素はどうでしょうか。インターネットや本で育成の解説をしている文章を読んでいると、ときどきこういった要素の検討を勧めている場面に出遭います。
 しかし、こういった要素について自然下とそれほど大きな差があるとは考えにくいはずです。実際、光やpH、溶存二酸化炭素量といった主要なところを水槽に整えていれば、「底床の通水性」や「粒の締め付け」といったことに無頓着でいても水草はちゃんと育ちます。水草はこのあたりの障害なら自らの生命力の強さでいとも簡単に乗り越えてしまうのが普通です。
 確かめるのは簡単です。水草を底床に植えずに水に浮かべておけばすぐに確認できます。仮に水草を光量が少なく二酸化炭素も足りず栄養分も乏しい環境下に浮かべておいたとすると、水草は遅かれ早かれ溶けてしまいます。しかし十分な光や二酸化炭素を与えながら浮かべてやれば、そのまま育ち続ける種類がほとんどです。

 以下はそんな実例の1つです。水草はハイグロフィラの一種(褐色のシャープな葉がつく種類)です。葉を茎から何枚かちぎり取り、蛍光灯の直下(二酸化炭素の強制添加あり)に浮かせました。もちろんpHやKH、水温といった要素も整えてある水槽です。

葉っぱが一枚からでもこのように再生が始まります。たいてい根が最初に生えてくるはずです。(撮影しやすいように水槽からバットへ移してあります)
   
こちらは別の葉っぱです。このように枯れて葉の一部が欠損しているような場合でも根は葉の中央部分からであろうともちゃんと生えてきます。
裏返すとこんな感じになっていました。

根がある程度伸びて栄養の補給が可能になったら、今度は芽です。
根が出始めた場所とほぼ同じ場所から小さな芽が出ます。

葉が欠けていても根の次に芽がちゃんと生えてきています。
アップにするとこんな感じです。
   
こちらは別の葉っぱ。
欠けて先半分しか残っていませんが、やはり根と芽の両方が再生してきています。
拡大したところ。
角度を変えて。

いったん芽の再生に成功すると光合成ができるようになるためか生長のスピードがぐんと速まります。


ここまで生長すれば「再生完了」と言えるでしょう(画像の右側に見えているのが元の1枚の葉っぱです。)
 こういった水草の生命力が強く働く例はパールグラスやスターレンジといった多くの種類で見られます。このような水草の実例を水槽でちゃんと観察していれば、水草には光量や水温などがある程度整っていれば底床に植わっていなくとも葉っぱ一枚から再生するだけの生命力が備わっていることが分かるはずです。
 水草の生命力を過小評価していると育成方法の検討で妙な方向へ進んでいってしまいかねません。

04.05.28



HOME
INDEX
BACK