■GOOD AQUA■

体積と表面積の関係


00.12.02

 
 以下は「体積と表面積の関係」についての説明です。アクアリウムの世界ではあまり・・というか、ほとんど触れられることのない事柄ですが、水槽の維持の様々な場面で活用できる知識だと思います。「何のことだ?」と思われた方は以下を読んでみて下さい。きっとどこかで役に立つはずです。




  「体積と表面積の関係」は、簡単に言ってしまうと、「体積が大きくなっても、表面積はそんなに大きくならない」という関係です。これを具体的に説明してみようと思います。

 まず、頭の中に1辺が1センチのサイコロを1つ思い浮かべてみて下さい。

 そのサイコロの体積は、もちろん「1立方センチメートル」ですよね。
 面積は、というと、6つの面があるのですから、「6平方センチメートル」です。

 単位がついていると面倒なので、単位を除くと、

体積1 : 表面積6  ということですね。

 では、このサイコロの体積を2倍に増やすとどうなるでしょうか。
  考えやすいように先のサイコロの隣に同じサイコロを1つくっつけてみて下さい。

 これで体積は2倍になりました。したがって、体積は「2」です。

  面積の方はいくらになったでしょうか。


  面を1つずつ数えると10面あります。したがって、面積は「10」ですね。

 すなわち、体積を2倍にしても、面は2倍の「12」にならないことが分かるはずです。

×体積2 : 表面積12
○体積2 : 表面積10 ←ここが重要。

 今度は、サイコロの体積を、元の8倍に増やしてみましょう。1つの大きなサイコロになるように集めて置きます。

 これで、体積は最初の8倍になりました。
 では、表面積はいくらになったでしょうか。また面を1つずつ数えてみて下さい。



  表面積は「24」になってますね。
 すなわち、体積が8倍になっても、表面積は8倍の「64」にはならないことが分かります。

×体積8 : 表面積48 ではなく、
○体積8 : 表面積24 という比です。

  この関係は、仮に体積を100倍にしても1000倍にしても同じ傾向になります。気が向いたら頭の中でためしてみて下さい。





  さて、以上から分かることは、「体積に対する表面積の割合は、体積が大きくなるほど小さくなる」という法則です。
 大雑把に言い換えれば、「体積が大きくなっても、表面積はそんなに大きくならない」ということですね。

 以上の知識が役に立つのは、たとえばこんな場面です。

1.「初心者は、大きな水槽を持つ方が失敗しない」

 これは、アクアリウムの世界ではしょっちゅう書かれたり言われたりしていることですよね。しかし、この本当の意味を理解している人は少数だと思われます。“プロ”を名乗っている方でもよく間違って理解しているのを見かけます・・・というより、正しく理解している方の方が少数のようです。
 「大きな水槽だと水量が多いから水質が安定する」というのは不正確です。重要なのは、水量に対する魚の量であって、水量の多少ではありません。水量が多くても、そこにたくさん魚を入れてしまえば小さい水槽の場合と同じです。逆に小さい水槽でも、魚の数を抑えるだけで同じ結果が得られます。
  現実は、大きな水槽の方がむしろ亜硝酸やアンモニアなどによる悪影響の可能性が高くなります。これは、浄化バクテリアが底床面やガラス面にも多く定着して活動することと、上述の体積と表面積の関係とを併せて考えればすぐに分かるはずです。水槽が大きくなるほど水量に対する底床面やガラス面の面積割合は小さくなりますよね。すなわち、大きな水槽の方がリスクが高くなります。
 初心者に大きな水槽が勧められる本当の理由は、体積に占める表面積の割合が小さくなると外気や水に溶け込む気体の影響を受けにくくなるからです。体積の大きい方が、1日のうちで変動する寒暖の差の影響を受けにくくなりますし、水に入り込む気体の量も水から出ていく気体の量も少なくなります。すなわち水質の変化が緩やかになります。またヒーターで暖められた熱は水槽の外へ放散しにくくなりますし、結果としてヒーターの通電回数も減ります。したがって、水温の変化が全体として緩やかになるのです。
  水槽の中の変化が緩やかになれば、当然、水槽内のトラブルも起きにくくなります。よって、「初心者には大きな水槽の方が良い」という結論になるわけです(大きな水槽には他にも利点があります。この機会にご自分で考えてみて下さい)。
  こういう場面の理解にも上述の知識が役立つはずです。

2.「小さい魚ほど水合わせなどを慎重にすべし」

 「小さい魚ほど体積に占める表面積の割合が大きい」ということもすぐに分かるはずです。つまり、体の小さい魚ほどふだんの扱いを丁寧にしないといけない、ということが、教わらなくても自分で導き出せるようになるはずです。
  買ってきた魚をはじめて水槽に放す場合はもちろんのこと、水槽の設置場所や日常の水換え時の温度変化、排泄物による水質の悪化など、ちょっとした変化があっただけで小さい魚は体の芯まで影響を受けてしまうことが理解できるでしょう。逆に大きい魚は、体積に占める表面積の割合が小さいので、実際、同じ扱いをしていても元気でいることが多くなりますね。「大きい魚は丈夫。小さい魚は弱い。」と言われる理由も簡単に分かります。

3.「大きい水槽ほど、ガス交換がされにくい」

 水量が多くなると水量に占める水面の割合(上部の表面積)が小さくなることもすぐ分かるはずです。つまり、たとえばCO2を強制添加するなら、水槽が大きいほどCO2が水面から逃げる率が低くなる、という結論を導き出せます。
  また、大型水槽になればなるほど水面から溶け込む酸素やCO2を期待することが難しくなるのも分かるはずです。逆に、水槽が小さいと大気によって水面から押し込まれる酸素やCO2の量が水量に対して多くなりますから、小型水槽なら強制的な添加なして維持する水槽が作りやすいという結論を自分で導き出せるはずです。

4.「粒の大きい餌ほど劣化しにくい」

 餌を買う場面や保存する場面でもこの知識は活きてきます。
  餌の粒は、1粒1粒が大きいほど体積に占める表面積の割合が小さくなるのですから、大きいほど空気の影響を受けにくい、ということになりますよね。すなわち、逆に言えば、小さい粒の餌ほど空気に触れる割合が大きくなりそれだけ酸化などの劣化が進みやすい、ということです。
  したがって、餌を買って長期間使いたいと思うのならば、細かい餌を買うよりも大きな粒のものを買って自分で小さくしながら使う方が劣化しにくくて良い、という結論が導き出せるでしょう。


  以上の他にも、「体積と表面積の関係」の知識を活かせる場面はいくらでもあります。
  ぜひ日常の維持にご活用下さい。



→ この体積と表面積の関係には名前があるそうです。「二乗三乗の法則」と言うものだそうです。
   でぱいゆさんから情報をいただきました。でぱいゆさん、どうもありがとうございました。01.01.19



HOME
ツボの壷
INDEX

BACK