水槽台を検討する 01.05.14


 今回は、水槽を置くための台についての検討です。
 「しっかりしたものを選ぶ」ということは当然ですが、具体的にはどんなところをチェックして選べばよいのでしょうか。これは、基本知識に含まれるテーマですが、選択のミスが重大な結果をもたらすだけに、しっかり押さえておくべきです。そこで今回は、この、意外に見落とされがちな「水槽台」にスポットをあてて考えてみたいと思います。

 

1. まず、水槽台として適しているか適していないかを見極めるには、どこをチェックすればよいでしょうか。

 結論から先に言うと、大きなポイントは3つあると思います。

(1) 剛性

 用いられている素材と、そのつくりがしっかりしていなければならないのは当然のことです。

(2) 耐久性

 私たちが日常使うものは、だんだん傷んできたところで買い換えればよいものがほとんどです。しかし、水槽台は、ちょっと傷んできただけであっても、その性質上、大崩壊する危険を伴うものです。少しでも天板が反ってきたら買い換えを決断しなければなりません。したがって、剛性が長期間持続することが必要です。すなわち、「初めの状態が長持ちすること」が、重要なポイントとなります。 

(3) 耐水性

 剛性が長期間維持されるかどうかを検討するときに、特に留意しておかなければならないのが、「水濡れ」です。用途が用途だけに、必然的に水に晒されます。「水に濡れても剛性が保たれるか」「水に濡れても耐久性があるか」の視点も忘れてはいけません。

 

 

2. それでは具体的なチェック点を見ていきましょう。

 まずは、ホームセンターや専門ショップで実物を見つけて下さい。
 見つけたら、最低限、次のような点をチェックします。

(1) 素材の強度: 材料が「ぺらぺら」や「ペコペコ」なものは問題外ですね。見るだけでなく、実際に自分の手で押してみてその強度を確かめましょう。

(2) 天板の強度: 天板を上から強く押し、びくともしないのを確認します。中央部分が少したわむのは仕方がないとしても、「全体に重さが分散するので大丈夫」と思ってたわみを軽視すると、あとでとんでもなく痛い目に遭います。
 材質は、無垢材だから良い、というようなものではなく、合板でも平たい箱型に組まれた天板などは、もっと丈夫だったりします。 厚くても、徐々に変形してくるような素材のものは避けます。

(3)組み立ての強度: 次に、水槽台全体を横から押してみます。菱形にかしぐようなものはダメです。

(4) 接合部分: ダボだけで接続しているようなものはダメです。また、水溶性の木工ボンドで接着してあるものもダメで。金具を使ってある場合は、金具の材質をチェックします。錆びるようなものが使われていればアウトです。高級ステンレスならOK、亜鉛でもOKですが、若干白く酸化します。また、その金具を留めているビスが合板の間に留められているのもアウトです。いずれ水分などで合板が剥れてビスが抜け易いです。

(5) 蝶番など: ドアがついているものは、その開け閉めのスムーズさや、蝶番の取り付け・材質などもチェックします。天板の変形でドアが閉まらなくなったり、蝶番が錆びて取り換えなければならなくなった、なんてことがときどきあります。

(6) 天板を支えている支柱: 天板を支えている支柱の数や位置をチェックします。支柱が天板の両端だけでなく、真ん中にも入っているものがお勧めです。真ん中に支柱が無いと、60センチ水槽用の台でも天板の真ん中が徐々に下に反ってくることがあります。真ん中に支柱が無い場合は、その分、天板に板を重ねるなど、補強が必要になります。
 この点、テトラ社の水槽台などは、収納スペースが小さくなるデメリットはあっても、しっかり天板を支える構造になっていて「う〜ん、うまい!」と思わされます。

<支柱の位置>

食器棚を横倒しにして水槽台にしてあるところです。
水槽の両端に加えて真ん中にも棚板があって、3点で天板を支えているので安定しています。
また、天板部分(実際は棚の側板)の補強の為にコンパネの切ったものを2枚敷いてあります。

(7) 耐水性: 水槽のトリミングや水換えを行うと、どんなに注意していても水槽の周りに水をつけてしまいます。すぐにタオルで拭き取るように気を付けていても、何年か続けていると、だんだん水槽台を傷めていきます。したがって、耐水性もしっかりチェックします。
 特に金属製の場合は、その防錆性能をしっかり見ておく必要があります。
 まずは塗装にキズが無いか、キズがつきにくいか、を見ます。キズがあるとそこから剥れ始めます。また、塗装が薄いものも、トリミングのハサミでこすったり引越し時のちょっとした接触でキズが入り、そこから剥れ始めます。ステンレス製のものであっても、そのステンレスがニッケルとクロムの使用量が少ない安物だと、早晩サビが出始めます。

 木製の水槽台であっても、この耐水性は重要な要素となります。
 天板に水がかかると、天板がその水をある程度吸ってしまいます。天板が吸った水分は徐々に水槽の下の奥へ染みていきます。そして、その水分は、時間とともに、天板と外気が接触しているところから蒸発して消えていきます。
 これだけならば問題は無いのですが、天板が水を吸った場合、天板が若干膨張するのです。上から重い水槽が押さえつけているので気付きにくいですが、確実に膨張します。
 問題は、その膨張の仕方です。上からは水槽が、下からは支柱が押さえているため、天板の膨張は支柱がないところへ集中します。例えば、両端と真ん中の3ヶ所に支柱がある水槽台の場合、正面から見ると、浅い「W」のかたちに膨張することになります。両端にしか支柱が無ければ、「U」の字型になります。
 そして、水分がすべて蒸発すると天板も元へ戻るのですが、これを何度も繰り返していると、だんだんと天板が「W」や「U」の字に変形していきます。
 そうすると、天板が水槽と接触する面積が少なくなり、「面」ではなく「点」で支えられている状態になってきます。そうなると、たいへん危険な状態です。
 したがって、木製の水槽台の場合、ワックスや耐水性のペンキでしっかり仕上げられていることをチェックしましょう。

(8) 接地面: 床と接する面積が小さいものは、安定が悪くなります。 また、接地面積が小さいものは、そこに重量が集中するため、床に痕がつき易くなります。 したがって、水槽台によっては、下に厚い板を敷いて重さを分散させる必要が生じるものもあります。
 あまり水槽台をひっくり返してチェックする人はいないと思うので、このチェック項目は忘れないよう気をつけておきましょう。

(9) 収納スペース: キャビネットタイプの水槽台の場合、その中に「エーハイム」などの外部式密閉フィルターを設置することがほとんどだと思います。したがって、フィルターの高さを考え、キャビネットの棚が可動式であるか、その場所から水槽上部までホースが届くのか、棚板がモーターの振動で共鳴しないか、CO2の大型ボンベも入るのか、なども忘れずにチェックしておきます。

(10) 加工の可否: 内部に落ち込む仕組みのオーバーフロー式濾過を計画している場合は、当然、天板の加工が可能かチェックします。また、見落としがちなのが、キャビネット内に外部式密閉フィルターを収納した時のホースの通り道です。大抵の場合は、背面に穴を空けてそこにホースを通すことになります。したがって、キャビネットの背面が加工し易いものでなければなりません。

(11) 安定性: 大きな重量をもつ水槽を上に載せるわけですから、これも必ずチェックします。見た目にとらわれて、これを見落とすことのないようにしましょう。地震のときのことを考えましょう。

(12) インテリア性観賞のし易さ大きさなど: このあたりは、当然のことですね(^^)

(13) 耐久性: 最後にトータル的に耐久性をチェックしましょう。購入時に上述のチェックをパスするものでも、その状態が1年しかもたないのではアウトです! また、他の用途の物と違い、「徐々に傷む」というのもアウトです。そんな、いつ限界がきて破綻するかわからない水槽と一緒に過ごす、スリリングな毎日、なんて嫌ですよね。
 数年間は間違い無く購入したときの強度のまま、という商品を選びましょう。

 

3. 水槽の崩壊の仕方

 水槽の崩壊の仕方には、何通りかあります。

(1)じわじわポトポト

→ 置かれている場所や状態には問題はなく、単に経年劣化で接合部のシリコンなどが剥れてきた場合に多いのがこのパターンです。すぐに大洪水になる可能性は低いので慌てなくても大丈夫で、まずは水を抜いて乾かした上で、シリコンなどを塗り直してやれば復活します。

(2)じわじわ、ドッパー

→ じわじわ漏れてきたなぁ、と思っていると、ドッパー!と水槽が崩壊するパターンです。多くの場合、水槽自体に問題があります。ボンドの品質、ガラスの接合面の仕上げ、組み立て時の歪みなどの問題があると、このパターンになることが多いです。接合部の端から剥れ始めることが多いので、気がついたら廃棄します。手当はまず無理です。但し、最近は水槽の品質が良くなっているので、このパターンはあまり起こらないと思います。

(3)チョロ、ピシッ、ドッパー

→ 始めはちょっとした漏水なのですが、突然ピシッ!という音とともにガラスにヒビが入り、次の瞬間にガラスが割れて水がドッパー!と流れ出すパターンです。ピシッという音で気分を盛り上げてくれる分、(2)よりも迫力がある崩壊の仕方ですが、私はご免こうむりたいです。
 大抵の場合、原因は水槽の置き方水槽台にあります。水槽の下に負荷が水槽の一部に集中していまうようなものを敷いていた場合や、天板が下向きにたわんで水槽の上部に中央向きの力がかかっている状態だったときなどに、この崩壊が起こり易いです。
 崩壊は、すぐに起きる場合もあれば、数年かかって徐々に水槽を傷め、もうその危険性など忘れてしまっているときに突然襲ってきたりします。旅行に行って帰ってきたら崩壊していた!なんてはなしも聞いたことがあります。この場合、ヒーターの空焚きによる火災の恐れもありますね。ためしに置いてみたら大丈夫だったから、という判断があとで大きなツケになって返ってくるパターンです。

 

 水槽台の問題は、もちろん、(3)に直結する問題で、特に集合住宅に居を構えている者にとっては重要な意味をもちます。60センチ水槽でも65リットル以上の水が入っているわけですから、一旦漏れてしまったら、何十万、何百万という損害賠償を請求される可能性も高いです。

 したがって、今回の「結論」です!

「水槽台選びには、労力とお金ケチるなかれ!」

 



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