■GOOD AQUA■

硝酸塩の蓄積
  


01.01.10 01.02.17(魚の重さを訂正)

 
1.水草水槽で、本当に硝酸塩が蓄積するのか

 ここをご覧になっている方なら、今更私が説明するまでもなく、水槽内ではアンモニアが亜硝酸を経て硝酸塩になることはご存知の事と思います。

 問題は、この硝酸塩がその後どうなっていくか、という点です。

 これは、次の2つの話しにつながっていくのが一般です。

(1) 一部は水草に吸収されるが、大部分は水槽内に蓄積する。
 この硝酸塩は生体にほとんど無害といっても、蓄積すると水質をどんどん酸性に傾ける。したがって、これを水槽の外に汲み出さないといけない。
 だから、「水換え」が必要となる。

(2) 一部は水草に吸収されるが、大部分は水槽内に蓄積する。
 この硝酸塩は生体にほとんど無害といっても、蓄積すると水質をどんどん酸性に傾ける。したがって、これを脱窒反応によって空気中に放出させてやるとよい。
 これが「嫌気性濾過」の必要性である。

 しかし、もし、この「硝酸塩の一部は水草に吸収されるが大部分は水槽内に蓄積する」という前提部分が、違っているとすればどうでしょう?

 というのも、実は、しっかり回り始めている水草水槽では、硝酸塩濃度がそう簡単には上がらないはずなのです。 (「とっくに知っている」という人も、一応ここでは、(゚_゚)エッ― っと驚いてください)

 こういうと、多くの人が「信じられない」と言います。(ここも「ウン、ウン」とうなずく!)
 でも、まずは試しに、ご自分の水草水槽の硝酸塩濃度を測ってみてください。

 もちろん、
(1)魚と水草と微生物がたくさん入っていて、
(2)最近水換えをしていない水槽 
でないとだめですよ。(一応、測りに行ったつもりにはなってくださいね)

 さて、どうでした?

 といっても、おそらく、多くの方が測れなかったと思います。m(_ _)mすみません。

 水草をたくさん入れている方でも、魚もたくさん入れているという方は少ないですね。したがって、このような方の水槽では、もともと硝酸塩が溜まるはずがありません。測っても最低レベルを示すのは当たり前です。
 また、セットしてからまだ間が無くて、バクテリアやミジンコなど微生物がまだ十分発生していない水槽では、まだ硝酸塩が蓄積する一方なので、やはり測っても仕方ないです。高いレベルを示すのは当然です。
 あるいは、週に1回、ちゃんと水換えしている方も、水槽に硝酸塩がたまっているはずがないので、測っても、あまり意味がないですね。

 しっかり回り始めている水草水槽では硝酸塩濃度がそう簡単には上がらない、という事実があまり知られていないのは、このような現状があるからだと思われます。 
 すなわち、週に1回機械的に換水することが定説になっている現状では、第1に、硝酸塩が溜まっているはずの状態にすら日常出会えない、第2に、微生物が頻換水によるショックで殖える間が無い、ということです。
 このような現状では、気付かなくて当然だと思います。

 気付くのは、
私のように、人の言うことに素直に従わない「ひねくれた人」か、
私のように、水槽の水換えすら嫌々やってる「ぐうたらな人」か、
私のように、お腹が「ぷっくり出ている人」・・・あ、これは関係無いか


 このような一部の方は、「しっかり回り始めている水草水槽では硝酸塩濃度がそう簡単には上がらない」という事実を、身をもって感じておられる事と思います。

 うちの水草水槽でもやはり同じです。ディスカスの幼魚と何匹も入れるような無茶はせず、常識的な数の魚である場合は、いつも硝酸塩濃度は低位で推移します。

 以下、この記事を書くにあたって現在の水草水槽の1つを測ってみました。

60センチの水草水槽です。この写真の時点で、2年近く底床掃除をしていません。水草も伸び放題です。
この水槽には、エビが何百匹か入っています。
したがって、毎日このくらいの量の餌を2回やっています。60センチ水槽で、顆粒をこの量ですから、給餌量としてはだいぶん多い方ですね。
先日、外部密閉式の濾過器が詰まってしまいました。ずーっと掃除していなかったせいです。そこでフタを開けてみると、エビとドロドロがたくさんでてきました。水草水槽に硝酸塩が蓄積しにくいことは知っていましたが「これだけドロドロだともしかしたら蓄積しているかもしれない」と思い、ためしに試験紙で測ってみました。
が、結果はやはりいつもと同じで検出限界以下でした(右側の試験紙)。そこで念の為に肥料の1000倍希釈液に試験紙を浸けてみました。すると真っ赤に呈色しました(左)。これで試験紙自体は正常で単に水槽の中に硝酸塩が蓄積してないことがわかります。

 

2.なぜ、よく回っている水草水槽では硝酸塩濃度が上がらないのか

 硝酸塩濃度が上がらない理由については、私もよくわかりません。上がらないことを指摘している記事をときどき他で見ることもありますが、その理由まで明らかにしている記事は見たことがありません。
 しかし、硝酸塩濃度が上がらない水槽を実際に観察していると、いくつかの理由を推測できます。

(1)水槽内の水草の相対量が多い
→ 硝酸塩の吸収量は少ないと言っても、ある程度は多いのでしょう

(2)根張りの良い水草をたくさん入れるとそうなり易い
→ 根につくバクテリアによる分解が盛んなのかもしれません

(3)CO2を添加しなくても難種水草が育ち易い
→ 好気性バクテリアのはたらきが盛んなのはほぼ間違いないでしょう 
→ 好気性のものの活動が盛んだとすると、嫌気性バクテリアによる脱窒も行われていて、好気性のものと窒素のキャッチボールをしているはずです

 逆に、なぜ、「蓄積して濃度が上がる」といわれるようになったのでしょうか。これも、理由をいくつか推測することはできます。

(1)昔の水草水槽は、現在よりも、水草の量に対する魚の量が多かった。
 また水草の育成技術も低く、水草が活発に生長していたとは言えなかった。
 → 水草による吸収量は相対的に少なかったはずです

(2)大型魚や、コミュニティー水槽(いわゆる魚詰め込み水槽)についての話しをそのまま水草水槽のところへ持ちこんだ
 → 水草水槽よりも先にブームになったアフリカン、グッピー、ディスカスといった水槽のときの話しがそのまま水草水槽に持ちこまれた例が散見されます

(3)メーカーやショップのセールス戦略の一環として広められた(^_^;) 

(1)について ; 
 どんなに水草がたくさん植わっていたとしても、その水草が活発に活動して栄養として硝酸塩を吸収していなければ、硝酸塩濃度は下がりません。したがって水草をきちんと育てる事のできる人の水槽でなければ、水草がたくさんあっても硝酸塩濃度は下がらないのです。
 この点、まだ水草の育成技術が進んでいない時代に存在していた本から、その記述をそのままひっぱってきている本があったりします。そのような本には「硝酸塩が蓄積し続けるので・・・」と書いてあったりします。そして、こんな本から、その記述をまたひっぱってくると・・・・。いつまでたっても現状に合った記述になることはありませんね。

(2)について ;
 ディスカスやアロワナを飼っていると実感しますが。水換えをちょっとさぼると、硝酸塩が蓄積して、水がどんどん酸性に傾いてしまいます。でも、水草水槽では事情が大きく異なります。
 たとえば60センチ水槽全体に水草を配置し、カーディナルテトラ(約3グラム0.3グラム/1匹)を40匹泳がせた場合、底面積に対する魚の量は、 0.18平方メートル : 12グラム です。
 これを、たとえばアロワナ(2600グラムぐらいのもの/1匹)に当てはめると、3.9平方メートルの底面積に水草を植えなければならなくなります。幅4メートル、奥行き1メートル弱の水槽に、水草を敷き詰めて、そこにアロワナ1匹というバランスになります。
 当然、こんなことを実践している人はほとんどいません。
 したがって、ディスカスやアロワナなどの飼育から得られた、「硝酸塩が水を酸性にする」という経験は、水草がいっぱいに茂った現在の水草水槽にはそのまま当てはまるものではないのです。

(3)について;
 これは、あまりにも露骨なので、みなさん、もうすでにお気付きのことと思います。
 水換え用具や、水換えの度に必要になる各種水質調整剤、バクテリア剤、そして水換えによって汲み出された栄養分を補うための各種栄養剤(肥料)、また、それを測定するための測定器具や薬品、など、これらの商品を発売しているメーカーは、好んで「硝酸塩が蓄積するので水換えをしなければならない」という論理を大展開します。

 他方、水草専門メーカーは、このようなものを、そもそも作っていなかったりします。たとえばデナリー社などは、「水草水槽では硝酸塩濃度は最低値を示す」との前提に立った商品開発や、商品ラインナップになっています。もちろん藻類防止の方策や加える肥料分なども、この事実を踏まえた上で提言されています。
 デザイア―社や、このデナリー社など、水草専門のメーカーが発売している水草用肥料に窒素分が入っているのは、このためです。

3.まずは「自分でたしかめてみよう」

 これまで、水草をいっぱいに茂らせた水槽をもちながら、硝酸塩を汲み出すために一生懸命に水換えをしていた方、窒素は過剰になっているからカリ分だけを補給すれば良いと思っていた方、きっとここまでの話しは受け容れがたいものだと思います。こんなこと言い出す人はあんまりいないでしょうし(^^ゞ 「お前のゆーことなんか信じられるか、ぼけー」とか、「またてきとーなことぬかしやがって! 口の中に親指突っ込んで、奥歯ガタガタいわしたろか」などと、キツイ目の励ましの声も聞こえてきそうですが、その前に! ぜひ、ご自分で確かめてみてください。

 方法は簡単です。次のような、よく回っている水槽で硝酸塩濃度を測ってみてください。

(1)少々たくさん餌を放り込んでも何ともない、
(=例えば60センチ水槽なら、スプーン3分の1ぐらいの餌を入れても亜硝酸値などが上昇しない)

(2)微生物がたくさん湧いている、
(=立ち上げてから4ヶ月以上経過していてミジンコなどが底床付近に肉眼で確認できる)

(3)水草が繁茂している水草水槽で、
(=底面いっぱいに水草がある状態)

3ヶ月間、普通に餌をやり続け、足し水のみで一切水換えをしないでおいてください。


(4)そうしたら、「試薬で検査」です。

 「メインの水草水槽でそんなんするのはコワイやん」という方は、プラケース(3.5リットル)で実験水槽を作ってみましょう。ただし水草水槽についての基礎的な知識が一定程度あることが前提です。

 

作り方は以下の通りです。


(1) できるだけ細かい砂(水深が浅いから)、たとえばサンディーゴールドや、ブライトサンドを用意します(ソイルは吸着性能があるから実験には不向きです)。なければ細目の大磯でもOKです。

(2) この砂を、メイン水槽の底面を掃除して出た泥水でゆすぎます(微生物の移植)。

(3) プラケースの底に、3ミリ程度敷きます。そして泥水は捨て、メイン水槽の水を入れます。

(4) 次に、ウィローモス、マツモなど、室温で育つ温帯産の水草を1つかみと、温帯産のエビか魚を入れます。ミナミヌマエビなら10匹 or メダカや赤ヒレなら5匹を、日にちをかけて、徐々に足していきます。

 この間、足し水以外は一切せず、小さい顆粒の餌なら最初は毎日5粒、だんだんと15粒くらいまで増やしていきます。水槽全体の立ち上がりが遅いようなら、新陳代謝を速めるために、暖かい場所に移動させましょう。10度以上ある部屋なら、加温は不要です(最初の水合わせだけは慎重に!)

 数ヶ月後、この一切換水をしていない水槽の硝酸塩濃度を測ってみてください。きっと最低レベルを示すはずです。 

<ミナミヌマエビの繁殖用水槽での例>
  ミナミヌマエビの子供がうじゃうじゃいるプラケースです(3.5リットル)。発生しているたくさんのミジンコで育てようと思って、グッピーの稚魚も入れています。 撮影した時点で、数ヶ月間毎日15粒以上のクロマフィッシュフードを入れ続けています。
しかし、硝酸塩濃度は、テトラの試験紙では検出できないレベルに留まっています。
最初は小さかった流木のモスとマツモが相当大きくなっていますので、硝酸塩のほとんどがこのモスとマツモに吸収されたと思われます。

<更にディープな世界へ>

 このように硝酸塩濃度が上がらなくなった水槽で、ある程度の期間、餌などの有機物を放り込み続けた後でその餌やりなどをピタリと止めると、その水槽の中に発生している微生物で賄えるだけの魚と、それに見合う水草だけが残り、残りは死んだり枯れたりする状態になります。
 ここで手を加えるのをぐっとがまんすると、二酸化炭素無添加&ほぼ無給餌で維持できる水槽に移行します。
 60センチ水槽だと、ペンシルフィッシュのように草食性の高い魚は20匹近く生き残るはずです。エビはたくさん生き残れます。この魚たちは、発生するコケやミジンコを餌にして生きていけます。水草も、すでに蓄積している糞や枯葉を分解する微生物から栄養や二酸化炭素をもらって生長します。
 ただし、このような水槽でも、底床の砂からゆっくりと溶出してくる硬度物質などを排出するため、(条件によって大きく異なりますが、)だいたい年に1回か2回は若干の水換えが必要になります。また、トリミングによって水草の体の組成分を水槽外に排出する分や空気中に放散してしまう物質分を補うため、たまーに餌や肥料をやる必要があります。
 挑戦してみると面白いですが、それなりの知識と経験は要ります。


※この方法による水槽の例

<1992年頃に維持していた水草水槽>
120×45×45
パールサンド、30W×4(PG−2&パルック)
ネオンテトラ30、コリドラス3、オトシン3、ヤマト20など

 



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