■GOOD AQUA■

水合わせを極める
  


00.12.03

 
 水槽の住人にとっては、命にかかわる問題であるにもかかわらず、アクアリストが意外に乱暴にやってしまっている「水合わせ」。今回は、この「水合わせ」について、検討してみたいと思います。

 みなさんは、買ってきた生体を、温度合わせしただけで水槽に放してはいないでしょうか?温度合わせだけで放すように書いてある本もありますし・・・。たしかに、大きくて丈夫な魚だったり、ショップでの水質とあまり差が無い水質だと、このような大雑把な方法でも大丈夫です。

 しかし、買ってきた魚やエビが、何日かかけて何匹かずつポロポロ死んでしまうことがあります。このとき、病気や濾過能力の不足を原因として疑う人は多くても、最初の水合わせの失敗を疑う人は案外少ないようです。
 もちろん、そんな場合、病気が原因のことも多いです。しかし、魚の大きさや、丈夫さ、水質の差の大きさなど、色々条件はありますが、「水合わせの失敗は、徐々に表面化してくることがある」ということも、知っておいてください。
 酸性度またはアルカリ度は、PHが1違えば10倍(または1/10倍)となり、PHが2違えば100倍(または1/100倍)となります。したがって、買ってきたばかりの魚やエビを家の水槽に導入するときは、慎重に水合わせしないと、生体に致命的なショックを与えかねないのです。
 水質のぜんぜん違う水槽に急に入れられた魚にしてみれば、「トータルリコール」で火星の大気中に放り出されたシュワルツネッガーみたいな気持ちでしょう。

 では次に「できるだけ丁寧な水合わせをする場合」を書いてみたいと思います。
 実際に自分でするとなると、時間や手間の制約から、なかなか次のようなめんどうなことをやるのは難しいと思います。そのような場合は、かける時間を短縮するなど、ご自分なりの工夫をしてみてください。
 ただし、初めの手間を惜しむと、あとでもっと手間とお金がかかることがあるので、「出来る範囲で精一杯丁寧にする」ということを心がけて実行してみてはいかがでしょうか。

「完璧なる水合わせ」-----------------------------------------


<買いに行く1週間ぐらい前に>
(そう、ここから始まるんです。)

.まず、1週間ぐらい前から、水槽の中の水を、買いに行こうと思っている生体に合った水質に、徐々に変化させて近づけておきます。

 長旅で疲れきってやってくる生体に負担をかけるより、今の水槽の住人の方が体力的に水質変化についてこれるからです。ただし、完全に一致させる必要はありません。両者の中間点の水質よりも、若干、新入りの生体の水質寄りにしておきます。

.水合わせに使うプラケースなどと、長めのエアチューブ、ガムテープ、ナイロン袋、保温用の箱、を用意しておきます。

 水合わせするときの容器は、プラケースだと水槽に浮かせられて便利ですが、途中で何度も水を捨てに行く手間がかかります。また、温度も変化し易いです。バケツのように大きい容器を使うと、容器一杯になるまでそのままでよいので、手間は減りますし、水合わせ中に温度も急変しにくいです。しかし、水槽の中に浮かせられません。この辺の選択は、好みの問題です。
 ちなみに私は、プラケースを主に使っています。休みの日に魚を買いに行くことに決めていて、水合わせをしながら、その横で本を読んで時間をつぶしています。(ふだん、溜めてしまっていた本は、ここで消化しよう!)
  PH測定器具、KHやGHを測る器具も、できればそろえておきましょう。(この3つは、水草水槽を維持する上でも必要になるので、入門者はぜひ持っておきましょう)
 保温用の箱は、釣りなどに使うクーラーボックスがあればいいですが、なければ発泡スチロールの箱を用意します。釣具店に売っています。あるいは、果物屋さんで、リンゴの入っていた発泡スチロール箱をもらいましょう。魚屋さんでもらってくると、あとで魚の匂いに閉口することになります(^_^;)そりゃ、くさいの、なんのって!


<当日、出かける前>


.当日はクーラーボックスか発泡スチロールの箱をもって買いに行きますが、出かけ前に、買いに行く生体の好みの水温よりも2度ぐらい高めのお湯が入ったナイロン袋を、湯たんぽがわりに入れておきます。
 夏場なら、ナイロン袋に水を入れて、温度を下げます。

.必要に応じて水質測定器具も携行します。


<ショップに着いたら>


.ショップでは、目当ての生体の入っている水槽の水質を調べて覚えて帰ります。

 ただし、ショップが、全部の水槽の水質をそれぞれ把握しているとはかぎりません。ですから、店員さんに一言断って、自分で調べるのが確実です。測ると、店員さんの言っていた数値とぜんぜん違う、なんてこともよくあります。忙しいショップでは仕方ないでしょう。決して、「このくそボケ!ぜんぜんちゃうやんけ!」などと悪態をついてはいけません。次から測らせてもらえなくなります。

.買う生体の量が少なく、かつ、すぐに持って帰れるなら、酸素封入は断り、空気をつめてもらいます。

 高濃度の酸素によって袋の中の水質が急変するのを避けるためです。もちろん酸欠のおそれがあるときは、酸素を入れてもらいましょう。店員が、まるで子供に諭すように、「魚はね、酸素を入れてないと死んでしまうんだよ(^^)」と、教えてくれることもありますが、逆らってはいけません。酸素による水質変化を化学式で説明しようなどと思ってもいけません。ニコニコ笑って、「でも、いらないんです(^^)」と言いつづけるのが得策です。

 ボックスの中の湯たんぽ(or水たんぽ)は、スペースに余裕があれば、ボックスに入れたまま、魚の袋と並べて入れて持って帰ります。

 ただし、ショップで入っていた水槽の水温が、湯たんぽ(or水たんぽ)と差があった場合、湯たんぽは捨てます。入れていると、かえって、水温を急変させることになってしまいます。
 
 ここまでして持ちかえれば、水温・水質とも、すでに最低限の変化ですむ状態になっています。


<家に帰ってきたら>


.生体はそのまま横に置いておいて、受け入れの準備をします。

 まず、エアチューブに、結び目を1つ作ります。
 (※結び目のかわりに、有ればコックを使うと調整し易いです)

 そのエアチューブの片方を水槽に入れて、もう片方の端は、プラケースまたはバケツに引っ掛けます。このとき、水槽からエアチューブがずれ落ちてくるはずなので、チューブをガムテープでガラス面にひっつけて止めます。

.クーラーボックスの中にプラケースを置けば、水合わせ中の温度変化が少なくてすみます。バケツの場合は、どうしようもありません。このとき、部屋のエアコンを強くかけるか、離れたところにストーブや扇風機を置くなどして、長時間かかる水合わせ中に水温が急変しないようにしておきます。ここまで、手早くすませましょう。

.次に、お湯で洗って暖めたプラケースやバケツに、袋の中の糞を入れないように、魚と水を移します。夏場なら、逆に、水で洗って、温度を下げてから使います。

10.次に、いよいよ注水です。
 エアチューブのプラケース側の端を口で強く吸って、チューブの中に水を吸い込みます。そして、プラケースに入れた水の量が500ccなら、3秒に1滴、1000ccなら1.5秒に1滴ぐらいのペースでしずくが落ちるように、チューブの結び目をゆるめます。

11.このとき、「アクアセーフ」などのコロイド剤があれば、規定量〜10倍量を生体の「種類に合わせて」、足していきます。

12.餌もあまるぐらいに入れます。

13.あとは、「すでに容器に入っている水に対する落ちてくる水の量の割合」を常に考えながら、徐々に水の滴下量を増やしていきます。
 
たとえば、初め容器の中の水が500ccだったのが、1000ccになったときには、1.5秒に1滴に増やします。
 コロイド剤も適宜足します。
 
たとえば、水の量が3000cc溜まったところで、容器の水を半分捨てたら、チューブからの水は半分に絞らなければいけません。
 バケツのように大きな容器を使っている場合は、水を捨てることなく滴下量を増やしていくだけですみます。
 ぜんぜん関係ありませんが、落ちてくる水滴を見ていると、「しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃん、し、と、ぴっちゃん」というメロディーが浮かんできて消えません(^_^;)

14
.注意点ですが、酸欠の心配がありそうなら、水槽から水草をとって、プラケースに浮かせましょう。容器を蛍光灯の光が当たる場所に置いておけば、エアレーションしなくてもすみます。
 
エアレーションで外気を送り込むと、容器内の水が外気温にまで急変してしまうので、良くありません。

15.12時間も滴下をやれば、水質は、ほぼ水槽の水と同じになっているので、あとは、温度合わせだけです。容器を水槽に浮かせて、最後の温度合わせのために1時間待ちます。

16.これで、やっと水槽に放すわけですが、餌を与えたので弱っていなければ、食べているはずです。したがって、生体の消化管の中の「古い水を含んだ糞」がたくさん容器内にでているはずです。これを水槽の中に入れないようにしたいです。そこで、生体はネットで掬って水槽にいれます。

17.普段の水換えのときに、コロイド剤を使用してないとしても、このときは水槽に規定量のコロイド剤を入れることをおすすめします。

18.あとは、水槽の水の減った分を足せばおわりです。ふーーっ!




※<上部式濾過の場合、少し簡単にできる方法があります>

 生体を持って帰ってきたら、プラケースにはほんの少しの水しか移さず、このプラケースを水槽に浮かせます。

 一結びしたエアチューブの先端を濾過のモーターの吐出口に突っ込むと、水がぽたぽた出てくるはずです。 
 滴下の量を調整したら、そのまま、エアチューブをガムテープで適当なところにとめて、一晩おいておきます。

 夜中、プラケースに水が一杯になった時点でプラケースが全部水没します。翌朝になれば、水中に生体を放出し終わっているはずです。

 この方法は、手間がかからなくて少しラクですが、ショップの水が若干水槽に入るので、病気の持ちこみの危険性などが高まる点に注意が必要です。

 



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