フタに加工する
 


   01.04.16 02.11.29(追記) 02.12.03(追記)



 フタの重要性・有用性は前稿(●水槽のフタについて考察する)でも述べましたが、いざ実際に自分の水槽にピッタリ合ったものを手に入れようとすると、なかなか市販品では見つからないのが現状です。
 外部式密閉フィルターのホースを通す穴や、サーモ&ヒーターのコードを通す穴の部分が特に問題で、市販品のほとんどが角を三角形に切り落としているだけのもので、ぴったり隙間なく閉められるフタは、まず手に入りません。
 したがって現状では、フタなしですます、大きな隙間があっても我慢して使う、市販品を自分で加工する、のいずれかを選択しなければなりません。

 そこで今回は、この3つ目の選択肢である「自分で加工」する方法を詳しくみていきたいと思います。

 

<塩化ビニール>

 切断はハサミで可能です。
 接着については、塩ビを接着できるボンドが少ないので、用途欄に「塩化ビニール」と書いてあるのを、必ずチェックして購入するところがポイントです。

<プラスチック>

 プラスチック板は、糸鋸で切れます。薄いものなら金バサミで加工できます。
 ボンドは、プラモデル用のもので足ります。

<アクリル板>

 アクリル板は、専用の道具があります。
 定規は、カッターで削れてしまわない金属製のものを使います。
 定規に専用のカッターをあて、何回もアクリル板の同じところを引っ掻き、ある程度溝ができるまで何度も引っ掻き続けます。端から端まで、しっかりと引っ掻き切るところがポイントです。
 溝が出来たら、そこを手で折り割り、あとはその断面をサンドペーパーでなめらかに仕上げます。
 引っ掻くとき、アクリル板の下にダンボール紙を何枚か重ねて敷いておかないと、アクリル板の端の方を引っ掻いたときに机を傷つけてしまうので要注意です。
 接着剤も、専用のものが市販されています。普通の接着剤だと、透明に仕上がらなかったりひっつかなかったりします。

 長期間使用していてキズが目立ってきた場合は、キズを取るためのコンパウンドが売られているので、これを買ってきれいにします。
 このコンパウンドをつけた柔らかい布でキズの周囲を擦っていくと、キズが目立たなくなり、アクリル板を再生できます。

左が研磨剤、右が専用の接着剤です。
それぞれ500円程度で買えます。
下の二つが専用のカッターです。
黄色い方は刃が交換できる方式のものです。青い方は操作の安定性が高いですが、刃の交換は出来ないタイプです。
120センチの水槽用に作ったアクリルのフタです(2枚で1セット)。
反り返り防止のために、両側と中央に細い板を貼りつけています。
また、設置したときにフタを開け易いように小さなアクリル片をつけてツマミにしています。

 

<ガラス>

 ガラスの場合、ますガラス切りでキズを入れ、その部分に弱い衝撃を与えて割れ目を入れて破断させ、最後にサンドペーパーで仕上げる、という手順になります。

 ホースやパイプを通す部分は、三角形に角を落とすか、プライヤーで、ちょっとずつちょっとずつ握り潰して割っていって、丸く開けます。

 出来上ったガラスを水槽上部にピッタリはめ、次にそのフタを開けようとすると、手掛かりになるところがなくて開けるのに苦労することになります。そこで、すべてピッタリと閉めてしまうようにはせず、一部を切り落として穴を空けておくことも多いです。
 しかし、冬場などは、この小さな隙間からも、水蒸気が上がって蛍光灯を傷めます。そこで、三角形の小さなフタを作って、これにつまみをつけ、その隙間さえも埋めてしまいます。

 ただし、ここまでやれば完璧なのですが、それなりに時間もかかるので、ほどほどにするのも大切かも・・・。

 

< 「ニッソースティングレー106」 の場合>

 
= 後ろにはみ出る部分と、前に空く三角形の穴 =

 スティングレー106の場合、「6MK用」という市販品が用意されており、外部式密閉フィルターを使うときはこの「6MK用」を2枚載せると上面全部がカバーできるようになっています。
 しかし、この「6MK用」は、ガラスの角を三角に切り落としてあるだけなので、そこを通るホースの周りに大きな隙間ができてしまいます。
 そこで、6MK用よりも少し幅が太い「6MKマスター用」を2枚買い、これを自分で加工してしまいましょう。具体的には、水槽に載せたときに後ろにはみ出る部分を切り落とし、角に、ホースとコードの太さにちょうど合った穴を空けるのです。また、前の方にある三角の穴も、小さな三角のフタを作ってふさいでしまいます。

 
= 後ろにはみ出る部分を切り落とす =

 ガラス切と長い定規を用意し、ガラスに線を引きます。
 ガラス切には、値段にわりと幅があるのですが、値段の高低は切り易さの高低にだいたい比例しているように感じます。したがって、ガラスのカットに慣れていないなら、少々無理してでも高価なものを買った方が、カットの失敗が減って結局安くつくと思います。ちなみにこのガラス切は、ホームセンターで2350円でした。ちょっと高かったですが、カットの失敗はあまり起きないです。
 次の画像にあるガラス切は、中に灯油などを入れてすべりを良くする仕組みのもので、1200円でした。上のタイプに比べると半額ぐらいですが、私の場合、その分カットの失敗が良く起きてしまいます。
 さて、ガラスのカットをうまくするコツですが、1.ガラスの端から端まで、 2.チチチという音をさせながらしっかり引き、3.一回で引ききる(二度引きしない)ことです。
 次に、引いた線に合わせて下に別のガラスや板、あるいは定規などを敷き、上から力をかけて割ります。
 但しガラスが厚い場合はこれでは割れないことがあります。何らかの事情で普通のガラスフタよりも厚い板を使う場合は、ガラス切りでキズをつけたあと、そのキズの裏側を、ガラス切りの後ろなどで線に沿って軽く叩いていきます。この作業で、「キズ」が「割れ目」になります。あせらず、何回もちょっとずつ叩いていきます。すると、パカリと、ガラスが二つに分かれます。
 もしガラスがうまく2つに分かれず断面に余分が残ってしまったなら、その飛び出た部分をプライヤーで少しずつ割り取れば、ある程度は修復できます。

 ガラスのカットはコツと慣れが要る作業で、最初はなかなかうまくいかないものです。したがって、できれば失敗した場合に備えて、余分のガラスを用意してから作業にかかる方が良いと思います。

 さて、切断した断面ですが、ここは必ずサンドペーパーでこすって角を落としておきます。これを怠ると手を切ってしまいます。
 サンドペーパーをかけるときは、表面と裏面にキズを入れないように気をつけましょう。また、あまり念を入れなくても大丈夫な工程です。
 この作業は、ガラスの粉が散るので、屋外で行うか、風呂桶の中で行い、あとで水できれいに流すかのどちらかが良いでしょう。
 

 
= パイプを通す穴を作る =

 余分な部分を切り落としたガラスに、外部式密閉フィルターのホースとサーモ&ヒーターのコードを通す穴を空けます。
 まず、水槽にこれらの器具を取り付け、そこにフタを合わせ、ちょうど良い穴の位置と大きさをマジックインクで写し取ります。
 次に、プライヤーかペンチで少しずつ少しずつ削っていきます。
 画像にあるペンチは、ガラスを大きくつかみすぎています。実際には、1度に1ミリ以下ずつ、プライヤーの角で掴んで握りつぶしていきます。少し上下に漕いでいくようにすればうまくいきます。決して一度にたくさん割ろうとしてはいけません。
 穴を作り終わったら、切り口にサンドペーパーをかけます。
 後ろ半分に使うガラスフタが出来上がったところです。
 水槽に載せてみると、このようにピッタリ隙間なくはまります。

 
= 前にある三角の穴をふさぐ =

 前半分に載せるフタは加工せずに使います。このフタは、最初から角を三角形に切り落としてあるので、この穴をふさぐものを作ります。
 材料は、後ろに載せるフタから切り落とされた破片を使います。
 
まず、ガラスに三角の穴の大きさをマジックインクで写し取り、その線に沿って最初と同じようにガラス切りでキズをつけて割ります。
 この三角形のガラス片につけるツマミは、ガラス切りで切り取っても、めんどうならプライヤーで割り取っても作れます。
 サイズを変えていくつかを同時に作っておくと、あとあとフィルターを買い替えたりガラスフタを交換したときに、その隙間に合うものをすぐに選んで使えるので便利です。
 三角形のガラスに、接着剤でツマミをつけたものです。

 接着剤は、蛍光灯の熱にも耐えられるものを選びます。

 
= 完成!! =

 これで完成です!

 フタの隙間はできるかぎりふさげました。
 こうしておけば、蛍光灯の寿命もグンと延び、漏電の危険なども抑えられます。

 

<規格水槽で無い場合>

 加工し終わったガラス板で、水槽の上部全体を覆ったところです。
 規格品でない水槽でも、上述のようにすれば、このようにピッタリしたフタを作れます。
 板自体は、ニッソーの市販品を使っています。
 フタの長さが、水槽の幅よりも少しだけ短かったので、アクリル板をほそ〜く切って、水槽のフチの左右に挟んでいます。
 右手前の三角形の穴も、これでふさいでいます。

 

<02.11.29, 02.12.03 追記>

 N・Oさんから、プライヤーで曲線部分をうまく修正して作ったフタの例を画像でいただきました。

 ガラス切りでフタをカットしただけだと、このように外掛けフィルター等の周りにどうしても隙間ができてしまいます。
 さらに、N・Oさんはガラスをカットするのに慣れていらっしゃるので、この画像のようなかたちのフタを完成させておられますが、ガラスは直線に切るだけでも技術が要求されるので、ふつうはこのように仕上げるのも難しいはずです。そうなると、余計に隙間ができてしまいます。
 ガラス切りを巧みに使い、さらに曲線部をプライヤーで仕上げられた例です。フタの完成度としては一級品だと思います。
 慣れた方なら、厚さ3ミリのガラスに半径2センチの曲線ぐらいまでは、なんとかガラス切りでカットできるそうです(それでも成功率は50パーセントほど)。
 まずベニヤ板で型を作り、それをガラスに当ててガラス切りを引き、コツコツと裏側から丁寧に叩いていって折り取る、という手順だそうです。そして、曲線部分をプライヤーでジョリジョリ修正し、最後にサンドペーパーをかけます。

 
<N・Oさんのコメント>

 こんな蓋が作れたのも「家が金物屋だから」の一言に尽きます。なんと言っても、材料はほぼ無尽蔵ですし、道具も作業場もインストラクターも揃っていて、ガラス加工には最適な環境でしたから。
 器用な方なら、慣れれば出来ると思いますので、ガラスの端材を大量入手できたら、是非チャレンジしてみてください。

 それと、ガラスの切り口を研磨する時、サンドペーパーやダイヤモンドヤスリを使うことが多いかと思いますが、グラインダーの刃も用途が広くてお勧めです。そのままガリガリ擦れば荒削りもある程度できますし、水をつけながら根気良く研いでやれば、結構きれいに面取りも出来ます。ガラス面に傷を付ける事もあまりないですし、安くて(一枚100円以下)耐久性もあり遠慮なくガリガリ出来るので、ウチでは専らこちらを使ってます。
 番手(粗さ)ですが、ウチでは60番の刃が磨り減ったものを再使用しているので、正味の粒度は「100番はあるかな?」といった感じです。なので、#100〜150くらいが使いやすいかもしれません。

 念のため付け足しですが、ガラスの加工は多少なりとも危険が伴いますので、怪我などないように十分注意して下さい。手や服を切るなどはもちろん、最悪の場合目を負傷したり、何針も縫う大怪我をすることもあるので、服装を含め作業に際しては準備を怠らないようにしましょう。ホントに、ちょっとした事ですぐに切ってしまいます。もし怪我をされても責任は取れませんので悪しからず。今現在、大きな不自由が無いのなら、無理にやるものでもないと思います。

 グラインダーの刃はホールド性が悪いので、気を抜くと怪我します。この前は中指の爪の間を切ってしまいました(痛!!)

※ ガラス屋さんへカットを頼みにいっても、通常、このようなカットは、「そんなことは無理!」と言われて断られてしまうことが多いでしょう。
 そういうときの解決策として、この情報とても役に立つと思います。

 

< 網 >

 最後に、夏場用にでつくるフタです。
 私が使うのは、網戸用に売られているネットです。300円もあれば買えます。メーター単位で計り売りしてくれるホームセンターもあります。
 枠は、バルサ材が、耐久性に劣るけれど、加工のし易さでお勧めです。普通のカッターナイフで自在に切り取れます。角材状に切り出せたら、これらを水槽の枠に合わせて組み、ホッチキスで接着します。ボンドで固めれば、より強くなります。ボンドは、木工用ボンドだと白くふやけるものがあるので、木工用でないものの方が良いです。

 次に、ネットをやや大き目に切り、これを枠にホッチキスで止めていきます。
 最後に、網のはみ出た部分をカッターで切り落とせば完成です。パイプ用に空けた角の部分は、はみ出たネットを切り落とさず、設置したときにパイプにかぶさるようにしておきます。そうすれば、その隙間からの飛び出しを少しでも防げます。
 枠の手前部分は、角棒を長手方向に2つに割り、片方は枠の1辺とし、もう片方は網に固定します。そうすると、エサやりなどのとき、いちいち枠を外さなくても、網を半分めくるだけですみ、便利です(写真参照)。

 アフィオセミオン(卵目)を大量に殖やす必要があったときに、120セ
ンチ水槽用に作ったフタです。
 扇風機で風をあてた場合、風は十分に網を通り抜けるので、水温を下げる効果については余り心配ありません。
 ホッチキスの針は、安物を使うとすぐに錆びるので、絶対に良いものを使います。

 



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