典型的なスタイル(ダッチ、ネイチャーなど) 00.12.09


 水草水槽の歴史はまだ短いです。しかし、すでにある程度確立されたスタイルがいくつか存在します。参考のために、ここでは、それらについて簡単に触れておきます。知っていると、自分のスタイルの参考になります。またいろんなアクアリウムに関するはなしが理解し易くなります。


「バランスト アクアリウム」

; もともとは、ヒーターや、エアポンプはもちろん、水槽以外の人工的な器具は一切使わずに、魚と水草などで酸素・二酸化炭素のバランスがとれているアクアリウムを指します。
 水槽に、その土地で飼える魚と水草を入れて、自然のバランスがとれていれば「バランスト アクアリウム」、ということになります。
 維持に頭は使わないとダメですが、お金と労力が一番かからないスタイルです。
 (この「バランスト アクアリウム」ということばは、よく誤用され、「窒素化合物の循環までできている水槽」という意味で使われていたりもします)


「パーフェクト アクアリウム」

; もともと、淡水のエビと水草などをガラス容器に入れて完全に密封したものなどをいいます。太陽の光エネルギーと熱エネルギー以外、外界からの干渉を排除し、容器内部が独立した生態系を営むアクアリウムです。当然、窒素の循環も含まれます。
 これを家庭で趣味のレベルで実現するのは難しいです。お勧めしません。
 (環境・生態系の研究者グループの作ったものが紹介されましたが、趣味の世界ではこれを「バランスト アクアリウム」と混同してしまっていることが多いようです)


「ダッチ アクアリウム」

; 第2次大戦前からヨーロッパにあった熱帯魚飼育の趣味のうち、戦後ドイツ・オランダを中心に盛んになった水草をレイアウトした水槽です。日本にはこのような熱帯魚水槽が無かったため、(オランダ→)アメリカから入ってくる本に載った家具調の華やかな水槽を「ダッチ アクアリウム」と呼ぶ人がでて、これが一般化しました。もともとは、「ヨーロッパで流行している水草レイアウト水槽」というぐらいの意味です。

 むかしは、アメリカで出版された本や、日本の雑誌の記事などで、「ヨーロッパの水草水槽によく見られる特徴」を挙げた上で、そのレイアウトデザインの仕方や育成技術を解説していることがよくありました。
 そのうち、「この特徴をもつものが『ダッチ』です」と、それまでとはちょっと違うことを言う人がでてきました。しまいには「この特徴を備えていなければ『ダッチ』ではない」と言う人まであらわれ、そのまま現在に至っています。
 最後の立場からだと、1.大型の家具調の水槽に、2.有茎草を、3.幾何学的にバランスよくレイアウトして、4.密植し、5.底床内も加温して、6.換水頻度を低くして維持する水槽、ということになります。
 同じ水景を長期に渡って維持するのに、トリミングが大変なのが難点ですが、幾何学的なレイアウトが美しいのが特徴です。熱心なファンも多いスタイルです。


「アクアート」

; 山田洋氏が提唱する、日本的な要素を取り入れて組み立てるレイアウト形式のことです。
 氏は、「ヨーロッパ式」と「日本式」に分別しておられます。
 盆栽のようにあえて草の生長を抑えて美しさを引き出したり、日本庭園風の石組みなどが特徴的です。
 日本の水草水槽が、ヨーロッパ式の水草レイアウト(ダッチ)一色に染まったときに、日本独自のレイアウトスタイルを提唱され、その後に大きな影響を与えています。
 「水草百科 上・下」(ハロウ出版)に、作成方法が載っています。


「ネイチャー アクアリウム」
「ナチュラル アクアリウム」
「ナチュラル アクアリスティック」


;3つは特に区別なく使われます。
 厳密な意味があるわけではなく、「自然『ふうの』水槽」といったぐらいの意味です。人工の水槽の中に押しこめた段階で、すでに「自然」では無くなっているのですから、「ナチュラル」で無いのは当たり前で、これらの言葉の定義をあまり突き詰めても答えはありません。
 前出の「バランスト アクアリウム」とは、器具を使ってバランスを作り出す点で大きく異なります。
 本来は、自分が「これは『ネイチャー アクアリウムだ』」と言えば、その段階で「ネイチャー アクアリウム」ということになります。


『ネイチャーアクアリウム』
 一方、ADA=天野尚氏の提唱するスタイルという意味での『ネイチャーアクアリウム』(←間にスペースは入らず1語)もあります。
 作り方は、ADAのHPにあります。
 どのようなスタイルが「ネイチャーアクアリウム」か、ということについては、ADAによる定義自体が流動的なので、「これはネイチャーアクアリウムだが、これは違う」と、示すことはむずかしいです。最近のADAでは「ネイチャーアクアリウムは、自然な構図と生態系の概念を大自然から学び、それらを水槽の中に再構成するアクアリウムスタイルです。」としているので、このコンセプトに沿っていれば、「ネイチャーアクアリウム」ということになるでしょう。
 「ADAの製品を使って、ADAの提唱する方法でセット・維持している水槽」は、間違い無く「ネイチャーアクアリウム」です。
 非常に見映えの良いレイアウトスタイルなので、一度は挑戦してみる価値があると思います。

 

結論;

 これまでの水草水槽の流れをざっとでも知っておくと色々役に立つ。
 また、ことばの用い方に変遷があるので、それを知っておくと頭が混乱しなくてすむ。



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