Endler's Livebearer
産まれてから間がない頃の稚魚


3.エンドラーズ ライブベアラーの一生

 遠藤君(エンドラーズ ライブベアラー)の一生は、グッピーやモーリーなど他の胎生メダカとほぼ同じです。メス親からは卵ではなく仔が産まれてきます。ただグッピーに比べるとメスがあまり大きくならないため、1回の出産で採れる仔は10匹程度だと思います。(もちろん、メスが大きく育つグッピーがかけ合わせられている系統だともっとたくさん産まれてきます。)

 産まれた直後の稚魚は腹部がポッコリ膨れています。卵黄だった部分がまだ完全には吸収されていないからです(いわゆる「ヨークサック」)。稚魚は産まれた直後にこの栄養の詰まった部分を消費し、1〜2日経つとスマートな体型に変わります(上の画像)。

 「グッピー」を育てる場合、色や体型を美しく仕上げようとする人が多いため、スマートな体型になる前の時点からブラインシュリンプを与え始めるのがふつうです。しかし水草水槽の中で魚を育てていく場合、それをすることは非常に困難です。大食漢のメダカにブラインシュリンプを十分なだけ与えて続けていると水が富栄養化し、水槽の中がコケやヒドラの巣窟になりかねないからです。したがって、水草水槽でエンドラーズなどのメダカ類を育てる場合は、できるだけふだん親魚に与えているのと同じフレークフードを使うのが良策だと思います。適度に砕いて与えれば、そこそこ食べてくれます。

よって、水草水槽で飼っていると、産まれてから数日経った時点で頭部の成長に比べて体の成長が遅れている個体がときどき見られます。

ただし、生後10日も経つと水槽の中のミジンコなどを積極的に捕らえることができるようになるため、少々の成長の遅れは解消されるのが通常です。

水温などに大きく左右されますが一般的に3週間程度経つとオスには体色の変化が現れます。また身体の成長速度が鈍り始めます。このあたりがオスとメスの体長の差の分岐点になるようです。

4週間ほどでオスの尻ビレは変形し始め、“ゴノポジウム”という交接器になります。要するに“おちんちん”です。

1ヶ月を過ぎたあたりから、オスはこの“おちんちん”をおっ立ててメスを追いかけ始めます。この行動はオスの生活の大部分を占め、餌を食う時以外は、ずーーーーーーっとメスの尻を追いかけ回します。

たいていの魚は、水槽の照明を点けた直後はしばらくボーっとしていて、それからおもむろに活動を始めるものですが、遠藤君のオスは点灯の直後からメスを追いかけ始めます。
そして照明が消える瞬間まで、1日中、メスを追って、追って、追って、追って、ずーーーっと、ずーーーーーーーーーっと、追い続けます。

メスは生後1ヶ月半から2ヶ月で繁殖能力を備え、その時点からすぐに仔を産み始めます。

したがって遠藤君を水槽に導入すると、導入から2ヶ月経たないうちに2世代が同居する状態に至るわけです。

ちなみに、水槽で若いメスだけを飼っていると、水槽の中が稚魚だらけになってしまうことがあります。若いメスは身体が小さく稚魚を食えないため、産まれてきた仔が減らないのです。オスももちろん食えません。オスは若いメスよりもさらに身体が小さいからです。

 

 

 

 

仔を産んで産んで産みまくるメスと、メスを追って追って追いまくるオスも、1年を経過した頃からだんだん弱ってきます。人間の目で見ても老いてきているのが分るはずです。

ただ、それでも遠藤君のオスは、メスを追うことを止めません。パタリと倒れて動けなくなる最後の瞬間までメスにアタックし続けます。

 

 

 

 

遠藤君の熱帯水槽での寿命はだいたい1年とちょっとです。1年半生きれば長い方でしょう。同時期に産まれた個体はだいたい同じ時期にバタバタといなくなります。

しかし、命のバトンは、次の世代、次の次の世代、そして次の次の次の世代・・・と引きつがれていきます。

命のバトンを受けとった稚魚たちは、親やその上の世代がそうであったように、やはり毎日少しずつ少しずつ大きくなり、やがて成魚に至ります。

そして、また、オスはメスの尻を追って、

追って、追って、追って、追って、追って、追って、追いかけ回して、追いかけ回して、追いかけ回して、追いかけ回して、ずーーーっと、ずーーーーーーーーっと追いかけ回して、そして追いかけ倒して、追いかけ倒して、追いかけ倒して、

そして、静かにその生涯を終えます。

 

 

 

 

あっぱれ。

 

05.01.06


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