Nannostomus beckfordi

 

ナノストムス ベックフォルディ の繁殖行動
(画像:オス同士の示威行動)

 ナノストムス ベックフォルディの繁殖行動の紹介です。
 ベックフォルディのふだんの色や柄は、はっきり言って、あまりパッとしません。美しい色彩をもつものが多い熱帯魚の中にあっては“並以下”でしょう。それにもかかわらず、ベックフォルディは人気があります。その人気の理由は、なんと言っても成熟した雄だけが見せる神秘的で重厚な“真紅”の色合いにあるのではないでしょうか。

 小さいうちは水槽の中でボーッと漂っていることの多い魚ですが、オスは成熟してくると濃い赤色を現し、盛んに他のオスを追いかけるようになります。
 同じ水槽の中に成熟したオスを複数入れていると激しいフィンスプレッディング合戦が、水槽のあちこちで始まります。身体を素早く激しく震わせながら体側全体を相手にこすりつけ、どちらかが疲れると一旦離れます。そして少し距離をおいて相手の様子をうかがい、再び身体をぶつけ合います。
 それが何度も何度も繰り返されます。
 

体をぶつけ合っている時は、お互い凄い形相。

「うぉぉおらあぁ〜!!」

「どぉりゃぁあ〜!!!」

 

< 産卵 >

(画像:産卵と放精)
 

 成熟すると、オスはメスに対しても積極的にアプローチするようになります。
 一方、メスは最初、冷淡な素振り。卵を持てるほど丸々と成熟したメスでも、多くの場合はオスほど繁殖に積極的ではなく、オスのアプローチをかわす期間がしばらく続きます。その間、オスは悲しくメスのお尻を追いかけ回すだけです。
 しかし、オスに追いかけられ始めてから何日か経つと、逃げるスピードがだんだんと鈍ってきます。そうなるといよいよ産卵のタイミングです。オスはメスの頭や背中を口先で押して底床の近くへ連れて行こうとします。
「きゃ〜!何すんのよ〜!!」
と抵抗するメスを、オスは何度も何度も、根気強く誘い続けます。
 やがて、根負けしたメスはオスに促されるまま草の陰の暗いところへ潜り込んでいきます。潜り込んだら、即、産卵です(上の大き目の画像が産卵のシーンです)。産卵の時には、オスだけでなくメスも黒っぽい色になっています。
 卵は葉の裏などにつけられるのではなく、底床の上にバラバラと蒔き散らかされます。
 産卵が終わると、メスは正気に戻ってサッサと浮かび上がってしまうので、オスはその後を追いかけ、また連れ戻して続きを行わなければなりません。けっこう面倒臭そうです。

  このような一連の行為がお腹の卵が無くなるまで何回も繰り返されます。場合によっては数日間続くことも珍しくありません。

 がんばれ!オス!

02.11.02

 


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